『ほら、見えてきたで!』
お葬式だ。
私のお葬式が行われている。
何だか、思ったよりこじんまりとしてないか?
『な、死んでるやろ?』
ポンっと死神が肩に手をおいた。
「あぁ、死んでるみたい・・」
『死んでるな!』
あいかわらず、私の言葉をさえぎり死神はかぶせてくる。
「・・・でも、まだ受けいられないよ」
『・・・そうか、ほなしばらくここにいるか?』
「・・・うん、もう少しここにいたい」
死神が私を見て言った。
『さっきも言ったけど、ほんま今の状態は危ないねん。自分今、めっちゃネガティヴやん。まぁ死にたてほやほややからやから仕方ないねんけど、、、よくない奴とかに狙われやすいねん』
「よくないやつ?」
『そやねん。ほやほやの丸腰のやつなんか、カモやで?飲み込まれたらそれこそ終わりや』
「もう、終わってる」
『そーゆーんやないねん。めんどいやっちゃな。ワシが離れたらわかるわ。離れるで!ええな?』
死神がジリジリと後退りしてゆく。
「・・・・・?」
背後に何やら嫌な気配がする。
振り返ってはいけない。
「チョ・・・ちょっと待って!死神」
ジリジリと離れ、死神はもう手の届かないところまで離れていった。
視界が暗くなる。
「・・まっ・・待ってください!わかりました!私死んでます!」
『そやろ?』
ピタッと死神が私の横にひっついてきた。
「・・・はい。あの・・別れの挨拶とかはしてもいいですか?」
小さい声で問いかける。
『あ~挨拶かぁ~。かまへんねんけど、後でごにょごにょごにょ・・・・』
死神が何かを濁したが、私はそれどころではない。泣いている家族や友達、知らない人もいるけど、やれることはやっておきたい。
「死神さん、しっかり横にいてくださいね。1人にしないでくださいね」
『わかってるわかってる』
聞こえているかわからないが、ありがとうとさようならと元気でいてねを伝えているうちに、自分が死んでいることを実感できるようになった。
『もう肉体はないねん。今あるんは意識だけやな』
死神が私に言った。
「なんかさぁ、自分のお葬式ってもっと盛大にやってると思っていたんだよね」
ボソッと死神に不満を言ってみた。
『そうゆうは伝えておかないとわからんもんやで?言ったか?自分?』
「・・・・言って・・ないか・・・。私が死ぬのはもっと先だと思っていたし、家族も私のことをわかってくれていると思っていたし、やってくれるもんだと思っていたかもしれない」
『よくあるやつやな』
「そんな簡単にまとめないでよ!一生に一回の葬式なんだから!」
『ほな、みんなが自分のことどう思ってたか、知りたい?』
「もういい。知りたくない!」
『ふ~ん。これは地獄になるで~』
「はっ?地獄?」
『ええねん。ええねん。気にせんといて。ほな次に行こうか!』
「ちょっと、地獄って何?説明して!」
ガッと死神のカマを持って言った。
「地獄って何?」
地獄って何?
『自分の思い描く地獄を想像してみい?』
振り返って死神が言った。
「思い描く地獄?血の池地獄とか?」
景色は一転した。
鬼が現れ、私を串刺しにした。
「イアタァああああああ・・・・・・くない?」
また私を串刺しにして、放り投げる。
「うわぁああああああああああっつ・・・・あれ?」
『どう地獄?』
血の池にぷかぷか浮かんでいる私に死神が言った。
「なんかリアリティーがないような?」
『死んでるからな!』
死神が続ける。
『自分、特に信仰とかないやん。地獄言うても昔話くらいの認識やん。ほやからこれが限界やねん。初めに見ていたお花畑、あれも自分が死んだ時のための設定やねん。自分が自分のために用意していたエンドロールやねん。それやのに、死んでへんとか何たらかんたら言うて、、ほんまに』
「死神。信仰がある人はどうなるの?」
いつの間にか背景がお花畑に変わっている。
『そやな。その信仰によるんやないか?自分の思ってる世界が再現されるんやから、天使が迎えにくると思っていたら来るし、鬼車かもしれんし、ずっと罪の意識に苛まれて、望んでよくないものと一緒になる奴もおるしな』
「・・そうなんだ・・・」
私は複雑な気持ちになった。
死神が話し続ける。
『今回の人生はどうやった?日本は案外イージーゲームやと思うねんけど?』
「そうかもしれないね。戦争もないし、死の恐怖をいつも感じる世界ではない安全な国だった。たださ、今考えると、何で生まれてきたのか分かんないだよね」
死神がカマを振り上げた。
『ほな、そろそろ次にいこか?』
「死後の世界」
死後の世界には、肉体がなくなり意思(感情)のみが残るようです。肉体から外れた意思はエネルギー体に戻ります。それと同時に自身が生前に思っていた「死後の世界」を体験することになります。「死ぬと自分が思い描いていた死後の世界が現れる」と言うことです。
それは、とてもリアルな夢を見ているような世界です。テーマパークで3Dライドに乗って体験している感じに似ているようです。痛みは感じません。ただ見ているそんな世界のようです。
「宗教と死後の世界」
宗教を持っている人は、その宗教に合った死後の世界観が広がります。天使が迎えにくると思っている人にはちゃんと天使が迎えにきます。
「死神」
死神は肉体から離れた状態の人を守る存在です。ほやほやの不安定な状態の人を守ってくれています。霊界に来たての時はお腹からへその緒のように意識がつながっている状態です。死神はそれを切るためにカマを持っているようです。